平成30年(ワ)第9714号 損害賠償請求事件

原  告  全日本建設運輸連帯労働組合近畿地区トラック支部 外4名
被  告  有限会社エム・ケイ運輸 外3名


大阪地方裁判所第5民事部合議4B係 御 中

令和元年11月  日

上記当事者間の頭書事件につき,被告瀬戸は次のとおり弁論を準備する。

                被告瀬戸訴訟代理人

弁 護 士  佐藤竜一
  
  同    川﨑悠貴

第1 被告瀬戸の取締役としての義務違反行為について(会社法429条1項)

1 被告瀬戸による本件ブログ記事投稿は,従前から述べるとおり,被告瀬戸の個人的意見・見識を示したものである。被告瀬戸が開設している本件ブログサイトは,被告瀬戸が被告会社の取締役に就任する前から数年間にわたって記事を投稿しつづけているものであり,被告瀬戸個人としての意見を表明する場であることは明らかである。
 したがって,被告瀬戸の本件ブログ記事投稿が,被告会社の取締役としての職務の執行に該当すると評価されることはあり得ない。

2 また,原告組合及び組合員が当時行っていた組合員各自で占有するトラックを,被告会社内の敷地において敢えて他の車両の通行を困難にするような形で駐車しつづけていた行為は,ストライキとして正当であると客観的に是認される方法ないし態様のものであったとはいえない。被告会社の敷地を上空から撮影した写真を見ても,各トラックが他の車両の通行を妨害していたというのは明白である(丙1)。

したがって,被告瀬戸による当該行為の実態を公に知らしめる行為が,被告会社との関係での注意義務及び忠実義務への違反になるということはできない。

第2 各トラックの車検証及び鍵について
1 車検証について

(1) 原告組合の組合員らからそれを交付するように要求されたために,各トラックに積載されるべき車検証を被告会社の従業員が敢えて交付したという経緯は従前から述べているとおりである。

 そして,従前の被告会社と原告組合の交渉経過において,原告柳生和美が原告組合の担当者のような立場に立って団体交渉と称する活動をしていることは被告会社も認識しており,当然被告瀬戸もそれを聞き及んでいた。ストライキと称する原告組合員らの活動態様をあわせて見ても,原告組合の組合員は原告柳生の指示のもとに活動をしていることが明らかであった。

そして,車検証を積載していないことが違法であるとの指摘を受けるにあたっても,対応に当たった被告会社の従業員は各組合員らがしきりに原告柳生の名前を出してこれを要求してきたことから,被告会社としてもそれが原告柳生の指示に基づくもので,原告柳生らが組合員らをして車検証を交付させたと考えた。

 また車検証を交付してからも,各トラックは原告組合の組合員らの占有下にあったが,最終的に各トラックを動かすにあたって確認をした時には,各トラック内に車検証が保管されていなかった。
 そうすると交付した車検証は各組合員らが個別に所持しているのではなく,同人らを指示している原告柳生のもとに移され,それを組合本部等において所持していると考えてしかるべき状況だったのである。

 そして従前からも主張するとおり,各車検証については各トラックを移動させる前に再発行の手続を取ったものの,それは事前に各トラックの内部に車検証がないことを確認したからこそ取った手続であり,時間的に矛盾しているものではない。

(2) 以上のとおり,原告組合の組合員ら及び原告柳生は,車検証を各トラック内に保管しておくかのように被告会社に申し向けておきながら,被告会社として結局はそれを車両内で保管していることが確認できなかった。そして被告瀬戸は被告喜夛及び被告会社の従業員らから事情を聴取したうえ,さらに自分の目でも確認をして,本件ブログ記事を投稿した。

 さらに原告組合の組合員らが独自に判断をして活動しているわけではなく,原告柳生の指示のもとで様々な要求を被告会社に対して行っていることも明らかであったため,最終的に原告柳生が組合員らをして車検証を持ち去らせていると判断できる状況だったのである。

2 車両の鍵について
(1) 繰り返して述べるところではあるが,通常は各従業員に車両の鍵の管理を任せているとしても,当該従業員が当該車両を業務に使用する意思がないこと表明すれば,被告会社として当該従業員に対してただちに返還することを要求して当然であるし,当該従業員としても,会社から同車両の鍵の返還要求がなされればただちに返還しなければならない。

 仮に車両の鍵の返還を要求されているのにも関わらず,それを返還しないというのであれば,それは違法であり,他人の物を自己の所有物として利用処分する意思が明らかである。

(2) 被告会社が保有する財産について,被告会社がその占有を会社に戻すことを求めているにも関わらず,それに応じないというのは占有侵害行為であって,正当な争議行為ではない。
 予備の鍵を被告会社が保有していたとしても,原告組合の組合員らの各車両についての排他的占有が否定されるわけではない。

 被告会社が動かそうと思えば予備の鍵を用いて無理やりにでも動かすことができたという状況が現実的には仮にあったとしても,そもそも事実上の「占有」を奪い,侵害していることが違法である。
 被告会社から返還を要求しているのにそれを正当な理由もなく組合員らが拒んでいるというにすぎないのであるから,被告会社が原告組合の組合員らに各トラックの鍵を所持させるのを許していたわけではない。

 そして本件については,原告組合の組合員らが原告柳生の指示のもとで不当な争議行為を約2年間にもわたって続けているのは明らかであったことから,被告会社としては,原告柳生が原告組合の組合員らをして車両の鍵を持ち去らせたと考えた。

(3) そして,被告瀬戸としては車両の鍵に関して被告喜多及び被告会社の従業員らより,返還を求めているのにも関わらず原告組合の各組合員より車両の鍵が返還されていないことを聴取している。

 さらに被告瀬戸は,原告柳生が主体となって原告組合と被告会社との間の交渉を進め,各組合員も原告柳生の指示に従っていたことも確認しているため,本件では原告柳生が車両の鍵を返還していないと判断して当然なのである。

 したがって,本件においては,原告柳生が各トラックの車両の鍵を持ち去っているということが事実であり,かつ真実であるといえる。

第3 本件ブログ記事投稿の趣旨
1 公共の利害に関わる事実
(1) 上記事実からすれば,原告組合及び原告柳生が主導する行為は,もはや争議行為の範囲を超えて違法であり,「車検証と鍵を持ち去る行為」は犯罪行為を構成するから,公共の利害に関わる事実であるということができる。

 本件では,原告組合の組合員らが各トラックを排他的に占有してその稼働を妨害していたというに留まらず,さらに非組合員及び第三者が運転する車両の運行も阻害しているとの状況であり,しかもその状況が約2年間も継続していたのであるから,これは「不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止するような行為」に該当する。

当時の被告会社の敷地内の状況を上空から撮影した様子を見ても,他の車両の通行を阻害していることは明らかであるから,原告組合の組合員らの行動が被告会社の業務を妨害する意図をもってなされていることは明白である。

 したがって,被告会社の正常な業務の再開のために各トラック7台を稼働させることは使用者側として当然であり,何らの誹りを受けるものではない。

(2) そして,被告瀬戸はそういった異常事態ともいえる状況を被告喜夛から聴取し,さらに実際に自身の目でもトラックの停止状況を確認した。
また,停車されたままの各トラックが原告組合員らによって排他的占有下に置かれていて,原告組合員らの私物も多量に各トラック内に運び込まれている状況で,あたかも各トラック内で生活を送っているかのような状況も確認した。

 この前提のもとで,被告瀬戸は被告喜多及び被告会社の他の従業員らから話を聞き,当該事実を公表することは社会的に意義のあることだと考え,本件ブログ記事を作成して投稿したのである。

2 公益目的
  上記に述べた態様での原告組合の組合員らによる行動は,「ストライキ」の名を借りて行っている正当でない争議行為である。

 そして,被告会社所有の各トラックの鍵及び車検証を実際に原告柳生が持ち去ったのかどうかについて,被告瀬戸が被告喜夛に対して確認をしたところ,原告組合の組合員らのストライキと称する行為は,原告組合の担当者される原告柳生の指示のもとに行われていること,被告会社は原告組合の組合員らの要求に応じて実際に各トラックの車検証を交付させられたこと,被告会社が各車両を確認したところ車検証がなく,これを再交付申請したとの事実を聴取した。

 以上のとおり聴取した事実を前提に,被告瀬戸は不当な争議行為の中に存する犯罪事実の有無を適切に判断した。そして,被告瀬戸は本件ブログ記事を掲載する前に,各トラックを移動させる経緯についても他の記事で述べている。

 そのうえで被告瀬戸は本件ブログ記事を投稿しているのであり,何らの調査も行わないまま,単に原告組合や原告柳生に対して攻撃的な意図をもって記事を作成し,その評価を貶めるために敢えて本件ブログ記事を作成しているのではない。
 被告瀬戸は,原告組合が「ストライキ」と称する行動における方法としての不当さを指摘するために本件ブログ記事を投稿しているのであり,そこに原告組合及び原告柳生への個人的な感情等は含まれていない。

 したがって,本件ブログ記事に被告瀬戸の原告組合及び原告柳生に対する悪意が表現されていると読み取ることはできない。

3 真実であると信じることについての相当性

(1) 被告瀬戸は被告喜夛からの事実の聴取のみならず,原告柳生が矢面に立って被告会社との団体交渉に臨んでいたという従前の経緯を確認した。
 さらに原告組合の組合員らが行っている行為がおよそ正当な範囲を逸脱している方法での「ストライキ」となっていることも客観的に明らかとなっている。
 そして各車両の中には各組合員に対して交付したはずの車検証の存在が確認できず,被告会社としては車検証の再交付手続が必要になると考えていたこと,及び組合員らが鍵の返還に応じようとしないということも被告瀬戸は認識した。

 以上の事実が原告組合の組合員らが原告柳生の指示のもとに活動していることについての信用性を高める事情となり,そこから「ストライキ」と称する活動を通して,原告組合の組合員をして原告柳生が車検証を被告会社から交付させ,さらには各車両の鍵の返還もしないままに原告組合及び当該行為を指示している原告柳生が,車検証及び車両の鍵を原告組合の組合員からそれらを受け取り,自己の占有に移したままであると考えてしかるべき状況であった。

(2) 車検証については,原告組合の組合員らに交付してから返還されず,さらには各車両にも結局積載されていないということで,特に再発行の手続という通常は必要がない手続を敢えてとるということであるから,最終的に組合員らではなく同人らを取りまとめていた原告柳生に車検証を持ち去られてしまったと考えてしかるべき状況であった。

 また,車両の鍵についても,本来であれば被告会社が所持する予備の鍵を使用することなく,各トラックを占有していた原告組合の組合員から鍵の返却を受けた上で各トラックを動かせばよいところを,同組合員らは被告会社からの要求に反してそれを返還しなかったために,予備の鍵を使用せざるを得なかったのである。

 当時のストライキと称する各トラックの稼働を妨害する原告組合の組合員らの行為は,原告組合及び原告柳生らの指示により実施されているものであることが容易に想定されたところであるから,各トラックを動かすにあたって被告会社が所持する予備の鍵を使用せざるを得なかった.トラックの鍵の占有を奪っていると信じるにつき相当な理由となる事実なのである。

 したがって,本件においては,被告瀬戸が本件ブログ記事の内容が真実であると信じるにつき相当な理由があったと評価するべき事情があったといえる。

以上、せと弘幸BLOG『日本よ何処へ』より

《参考記事》

【違法争議】争議行為が正当性を欠く場合、不法行為に基づく損害賠償請求が可能 ―判例集―


※ストは開始から699日目に解除となった。

樋渡一巳 
●「奈良県屋外広告物条例違反」として撤去命令が下された連帯ユニオンの幟旗

kantou
大型トラックに連帯の横断幕をつけ、車検証と鍵を持ち去り、駐車場を占拠

1
MK運輸

3
会社敷地内に座り込む韓国建設労組の組合員

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